2026.10.5
レク広場の、中の人。
4,000点を超える素材から、何を選んで、何を落としているか。

素材を選ぶ基準は、高齢者の方をどう見ているかと、たぶん同じことなんです。
この記事はこんな方向けです
- 介護施設でレクリエーションを担当している方
- 毎回のレク企画に、時間をかけすぎていると感じている方
- 素材を探すとき、何を基準に選べばいいか迷うことがある方
- 介護レク広場を使ったことがある方、名前だけ知っている方
はじめに
介護レク広場は、介護施設でレクリエーションを担当する方に向けた、無料のレク素材ダウンロードサイトです。会員数は7万人を超えます。
塗り絵、脳活、飾りつけ、ちぎり絵、季節の行事もの。2026年9月14日時点で、4,248点の素材を公開しています。
素材だけの場所ではありません。公式LINE、介護レクNEWS、メールマガジンでの情報配信、企業とのプレゼントキャンペーン。レクにまつわる情報とイベントが、日々動いています。BCCが長い時間をかけて積み上げてきた、資産のひとつです。
素材の作り手も、編集チームだけではありません。BCCが認定するレクリエーション介護士が考えた素材も、ここに並んでいます。学んだ人が、つくる側にまわる。そういう循環が生まれている場所でもあります。
ただ、今回お伝えしたいのは、規模の話ではありません。
4,248点あるということは、その裏側に「載せなかったもの」があるということです。誰かが一点ずつ見て、これは載せる、これは載せない、と決めている。
その判断には、はっきりした基準がありました。
介護レク広場の編集を担当している大谷遥に、話を聞きました。素材の使い方ではなく、選び方の話です。
プロフィール

大谷 遥(おおたに はるか)
BCC株式会社 ヘルスケアビジネスカンパニー 主任
介護レク広場の編集を担当。レク素材の企画、制作パートナーとの進行管理、掲載判断を行う。
第1章
素材が1点、公開されるまで

―― まず、一点の素材が公開されるまでの流れを教えてください。
最初に、行事やイベントの確認をします。季節の行事とか、記念日とか。そのときに介護施設で必要になりそうなものを、ひと通り洗い出すところからですね。
それから、すでに公開している素材と照らし合わせます。これはもうある、これは足りない、というのをリストにしていく。
足りないものが見えたら、新しく企画を立てて、イラストレーターさんに制作をお願いします。上がってきたものを編集チームで確認して、問題がなければ公開します。
―― 一点あたり、どれくらいかかるものですか。
企画から公開までは、一ヶ月〜一ヶ月半くらいでしょうか。
―― 工程としては、そこまで複雑ではない。
そうですね。ただ、判断が集まるのは、上がってきたものを確認する場面です。ここで載せるか載せないかが決まるので。
第2章
最初に見るのは、「幼稚に見えないか」

―― 上がってきた素材を見るとき、最初にどこを確認しますか。
幼稚に見えないかどうか、ですね。
―― 幼稚に見えないか。
はい。子どもの塗り絵が並んでいるように見えないか、というのを、いちばん最初に見ます。
介護施設で使う素材って、扱いやすさを優先していくと、どうしても線が太くなって、形も単純になっていくんです。そのまま進めると、子ども向けの教材とほとんど変わらないものが出来上がってしまう。
でも、使うのは何十年も生きてこられた大人の方です。扱いやすくすることと、子ども扱いすることは、違うと思っていて。そこの線を引けるかどうかが、最初の関門かなと思います。
―― 具体的には、どういう調整になりますか。
たとえば塗り絵の余白です。
広く取ったほうが塗りやすいんですけど、余白が多すぎると、絵として物足りなくなってしまうんですね。塗りやすさだけを優先すると、完成したときの手応えがなくなる。だから余白は、必要な分まで減らします。
―― モチーフの選び方はどうでしょう。
昔を思い出すような題材は、会話が生まれやすくて、喜んでいただけることが多いです。
ただ、同じ「昔」でも、戦中の記憶に触れるようなモチーフは外しています。楽しむための時間に、思い出したくないものを持ち込みたくないので。
―― 選ぶ基準というより、見送る基準がはっきりしているように聞こえます。
そうかもしれません。こっちのほうが、輪郭がはっきりしていますね。
第3章
「使えるかどうか」は、手間と安全で決まる

―― 素材としてよく出来ていても、介護施設で使えなければ意味がない、ということもありますよね。
あります。そこで見ているのは、大きく2つです。
―― ひとつめは。
手間と時間です。
準備に手間がかかるものは、採用しにくいんですね。レクを担当されている方って、レクだけを担当されているわけではないので。準備に時間がかかる素材は、どれだけ良いものでも、結局使われないまま終わってしまう。
なので、必要な道具が少ないこと、事前準備が短く済むこと。ここは厳しく見ています。
―― もうひとつは。
安全面です。
特に確認しているのが、誤飲のリスクですね。たとえば見た目のきれいな、おはじきみたいな小さいパーツは扱いません。工作として成立していても、そこで見送ります。
素材そのものの出来と、介護施設で安心して出せるかどうかは、別の話なので。
第4章
説明文は、素材じゃなくて「使う人」を見て書く
―― 素材には使い方の説明文が付きますが、書くときに決めているルールはありますか。
読むのは、レクを担当されている方だという前提で書いています。
―― というと。
素材の説明ではあるんですけど、読んだ方はそれをもとに、その場で話すことになるんですよね。手元で読み上げるんじゃなくて、覚えて自分の言葉で話す。
だから、シンプルにします。覚えやすい長さにして、そのまま口に出せる形にする。専門的な言い回しは避けますね。
―― それ以外に入れているものは。
豆知識みたいなものを、少し入れることがあります。素材の由来とか、季節の話とか。
会話のきっかけを、説明文の中に置いておくというか。素材って、渡して終わりじゃなくて、その場で使われて初めて成立するものなので。説明文は、そのための道具だと思っています。
―― 出し分けの考え方も、そこから来ていますか。
そうですね。介護レク広場の素材には、利用者の方が手を動かすものと、職員の方が用意する飾りつけのようなものがあります。誰が使うかが違えば、必要な説明も変わってくるので。
第5章
4,248点の、その先
―― よく見られている素材には、傾向がありますか。
ひとつは、季節に合ったものですね。行事とか、季節の変わり目に合わせた素材は、繰り返し使っていただけます。
もうひとつが、昔の経験とつながるものです。昭和の風景とか、当時の暮らしを思い出すような題材。手を動かすだけで終わらずに、その場の会話につながっていくんですよね。

―― 逆に、意識して増やしているジャンルはありますか。
塗り絵、脳活、便利素材。このあたりは、他のサイトにもたくさんあるんです。すでに十分にあるものを増やしても、探している方の役には立たないので。
そこで見つけたのが、ちぎり絵でした。
―― ちぎり絵。
検索されている言葉を調べていくと、ちぎり絵を探している方が一定数いらっしゃるんです。でも、出てくるのは子ども向けのものが中心で、大人が取り組めるものが見当たらない。
―― 先ほど出たお話しと同じ話ですね。
そうなんです。子ども向けしかないジャンルを、大人向けにつくり直す。今いちばん力を入れているのは、そこですね。
―― 外からの声で、判断が変わることもありますか。
ありますね。お問い合わせから「ちぎり絵がほしい」というご要望が届いて、それが企画につながったこともありました。いただいた声は、真摯に受け止めるようにしています。
―― 課題に感じていることは。
正直に言うと、4,248点という点数に対して、分類や整理が追いついていません。探しにくさが残っているのは、事実だと思っています。
ここは、これから手をつけていくところです。
まとめ
レクに困ったら、来てもらえる場所に
介護レク広場は、素材を集めた場所です。ただ、点数を増やすことそのものを目的にはしていません。
一点ずつ見ているのは、こういうことでした。
- 幼稚に見えないか。大人が取り組むものとして成立しているか
- 準備に手間がかかりすぎないか
- 安心して出せるか
- 説明文が、その場で話せる形になっているか
- すでに十分あるものではなく、足りていないものか
基準の中心にあるのは、高齢者の方を子ども扱いしない、ということでした。扱いやすくすることと、簡単にすることは違う。その線を引き続けることが、編集の仕事なのだと思います。
最後に、読者の方にどう見てほしいかを聞きました。

「レクのことで困ったら、とりあえずひろばに来てもらえる。そういう場所にしたいです」
素材を探す場所であると同時に、迷ったときに立ち寄れる場所へ。
介護レクリエーションのことなら、介護レク広場。そう言ってもらえる場所を目指して、今日も一点ずつ見ています。4,248点は、その途中経過です。