2026.8.3
ウェビナーの、裏側で起きていたこと。
課題を出す前に、つまずく。だから、開き方から考える。

この記事はこんな方向けです
- 介護施設で、DXや業務改善を「そろそろ考えたい」と思い始めた施設長・管理者の方
- 法人本部で、複数施設の生産性向上を担当されている方
- 補助金を使ったテクノロジー導入を検討し始めた、介護DX推進担当の方
- 「何から手をつければいいか」で止まっている方
はじめに
2026年4月27日、BCC ヘルスケアビジネスカンパニーでは、介護施設に向けた課題抽出ウェビナーをオンラインで開催いたしました。テーマは、「テクノロジー導入に向けた準備」です。
ただ、当日話したことの中心は、機器の選び方ではありませんでした。「どの製品がいいか」の前に、「自分の施設は、何に困っているのか」を整理する。その手順を、ひとつずつ確かめる時間でした。
登壇したのは、BCCグループに参画するロボタスネット株式会社の逢坂大輔さん。介護施設の業務改善とテクノロジー導入を、課題抽出から定着まで支援してきた方です。
このウェビナーには、はっきりした目的がありました。機器を入れる前の「課題の出し方」で止まってしまう施設が、少なくないこと。そうした、これから始める施設の方に、進め方を持ち帰ってもらい、まずは自施設でやってみられる状態にすることです。
そのため、内容は特別な手法ではありません。厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」(生産性向上ガイドライン)に沿った、標準的な進め方です。大阪府介護生産性向上支援センターでも、長年にわたり同じプロセスで支援が行われています。いわば、王道のやり方を、あらためて解説する時間でした。 この記事では、その進め方を紹介しながら、裏側で見えていたこと——「課題を出す」という、いちばん最初の一歩の難しさについて、逢坂さんの言葉とあわせてお伝えします。

逢坂 大輔
BCCグループに参画/ロボタスネット株式会社 代表取締役社長
大阪府介護生産性向上支援センター 業務アドバイザー/理学療法士/作業管理士
令和3年から、介護施設へのテクノロジー導入支援に携わる。課題抽出から始める業務改善、導入後の活用・定着までの伴走支援に、多くの実績を持つ。
“何を入れるか”の前に、“困りごとを出す”ことがいちばん難しい。だから、少しずつ触れられる入口と、見やすい設計から始めます。
第1章
まず、困りごとを出しあう。そして、分類し、順番をつける。

生産性向上ガイドラインが示す流れは、シンプルです。困りごとを出しあう。分類する。優先順位をつける。テクノロジーの対象かどうかを見極める。そのうえで、機器を選ぶ。この順番が土台になります。
ウェビナーの入口も、製品の紹介ではなく、困りごとを出すことから始まりました。
夜勤の見守りの負担が大きい。居室確認のための移動が多い。移乗介助で身体に負担がかかる。コール対応が重なる。物品を探すことが多い——。まずは絞り込まず、気になることを広く挙げる。それが最初のステップです。
次に、出てきた困りごとを、似たものごとにまとめていきます。見守り・夜間対応、移乗・移動介助、物品・探し物、排泄介助。こうして束ねると、どの場面に負担が集まっているかが見えやすくなります。
整理に迷ったときの“形”も共有されました。「どの業務で」「何が起きていて」「その結果どうなっているか」。この形にすると、漠然とした負担感が、手をつけられる課題に変わっていきます。これは逢坂さん独自の工夫ではなく、支援センターの研修でも共通して使われている整理の仕方です。 そして、優先順位をつけます。影響が大きいか。頻度が高いか。いまの体制でも着手しやすいか。全部をいっぺんに変えようとせず、まず一つ決める。ここまで進めば、次の検討に入れます。補助金や助成金は、導入計画と切り離さず、課題整理・機器選定・運用設計とあわせて考えることがとても重要なのです。
第2章
テクノロジーの対象かどうかを、見極める。

優先順位が決まったら、次はその課題が、そもそもテクノロジーで解くものかどうかを見極めます。ここも、ガイドラインに沿った手順です。
見守りや確認の負担、コール対応の重なり、夜間の巡回、移動や探し物のムダ、身体への負担。こうした課題は、テクノロジーの活用を検討しやすい領域です。
一方で、ルールが整理されていない、役割分担があいまい、やり方に人によってばらつきがある、教育が追いつかず定着しにくい——。これらは、機器を入れる前に、まず業務の進め方や体制を整えることが先になる課題です。
補助金を使うことを考えている場合でも、順番は変わりません。「その課題は、そもそもテクノロジー導入の対象になるのか」。ここを見極めないまま機器を選ぶと、導入したのに使われない、という結果につながりやすくなります。
機器の選定は、この見極めのあとに来ます。順番を守ること自体が、遠回りに見えて、いちばん確かな進め方だということです。
第3章
種別が違っても、課題は同じ形をしている。

ウェビナーでは、伴走支援の実例も共有されました。施設名は伏せ、種別だけで見ていきます。
介護付き有料老人ホームでは、夜勤の見守り負担が大きく、その背景には巡回回数の多さや、情報が共有しにくいこと、建物の配置の影響がありました。特別養護老人ホームでは、申し送りや確認の負担が大きく、連携の不足やルールの未整理が見えてきました。介護老人保健施設では、見守りと移動の負担が集中し、人手不足や見守り体制、建物環境が絡んでいました。
種別が違っても、たどり方は同じです。課題を出し、背景を考え、そのうえで対応の方向性を決める。実例でも、いきなり製品を選ぶのではなく、ガイドラインと同じ順番を踏んでいました。 だからこそ、同じ「見守り機器」でも、なぜ必要なのかは施設ごとに違ってきます。
第4章
裏側で、いちばん難しかったのは“出すこと”だった。
ここまでは、当日の内容です。ここからは、その裏側で起きていたことをお伝えします。
手順としては、困りごとを出すことがスタートです。けれど逢坂さんは、そこがいちばん難しい、と話していました。
始めたばかりの施設ほど、自分のところの困りごとを、言葉にして出しづらい。まだこれから始めるところだから、と身内のことを口にしにくい。DXや業務改善は、“できていないこと”を並べる作業に見えてしまうこともあります。
もうひとつ、集まれる人が限られる、という現実もありました。日々の業務を抱えながら、決まった時間に集合して学ぶのは、そもそも難しい。学びの入口がひとつの形に固定されていると、届く人はどうしても限られます。
だから、と逢坂さんは言います。必要なのは、段階的な接触です。一度で全部を伝えようとせず、少しずつ、無理なく触れられる入口を用意する。そして、受け取る側にとって見やすい設計にする。
課題を出せる状態を、先につくる。それが、課題抽出のさらに手前にある一歩でした。 進め方そのものは、王道で、特別なものではありません。それでも、いざ自施設でやってみると、手が止まることがある。このウェビナーは、まず持ち帰って試してもらうこと、そして、うまく進まないときに相談してもらうことを、はじめから想定していました。
課題を、ひらく。
介護施設に、テクノロジーを届けるまでには、いくつもの工程があります。機器を選ぶのは、そのずっと後です。
このウェビナーで扱ったのは、その最初の工程——困りごとを出しあい、分類し、優先順位をつけ、テクノロジーの対象かどうかを見極め、そのうえで機器を選ぶ、という手順でした。生産性向上ガイドラインに沿った、標準的な進め方です。
そして裏側で見えていたのは、その手順に入る前に、「課題を出す」こと自体につまずく施設が少なくない、ということです。
だから、まずは小さく始めてみてください。ひとつの困りごとから、話し合いを始めてみる。そのうえで、途中で手が止まったり、解決の幅を広げたくなったときには、外から伴走してもらうという選択肢もあります。

BCCは、機器を選ぶところからではなく、課題の出し方を整理するところから、導入後に使われる状態になるまでを、ひとつの流れとして支援しています。課題を、ひらくところから。
ウェビナー参加者に配布した「課題抽出ワークシート」のように、自施設で課題整理を始めるための入口もご用意しています。まずは無料相談から、お気軽にご相談ください。